ごえんびと 第8回 村田 ますみ さん

ごえんびと

第8回
株式会社ハウスボートクラブ
村田ますみ さん

村田ますみさん

海洋散骨の様子

連載コーナー「ごえんびと」
壽徳寺にご縁のあるひと(ごえんびと)にインタビューし、想いを伺いながらご縁を深めます。

第8回目は、株式会社ハウスボートクラブ 村田ますみさんです。

ハウスボートクラブさんは東京にある会社で、*海洋散骨事業とコミュニティカフェ事業をされています。コロナ前、村田さんが経営されているカフェ「ブルーオーシャンカフェ」に住職が行き、海洋散骨についてお話を伺った時からのご縁です。
コロナ以降、同カフェ主催のオンライン法話会に住職も参加させていただいています。村田さんとは、*グリーフケアについて同じ団体で学びを重ねたという繋がりでもあります。
二人の共通キーワードでもあるグリーフケア・グリーフサポートのお話、福祉のお話など、コロナ状況下であったからこそ深まった距離感で、想いが重なるインタビューとなりました。どうぞご覧ください。


*海洋散骨とは

 海洋散骨は「祭祀の目的をもって、故人の火葬したあとの焼骨を海洋上に散布すること」をいい(一般社団法人日本海洋散骨協会のガイドラインより)、自分の死後は自然に還りたい、大好きだった海に眠りたい、といった故人の意志や、様々な事情でお墓に入れない、お墓を持てないという悩みをお持ちの方に最適な葬送方法とされています。海洋散骨の方法として、「船舶でおこなう方法」と「ヘリコプターやセスナ機で沖合いまで飛び、空から撒く方法」があります。
ブルーオーシャンセレモニー HPより)

 

*グリーフとは

「グリーフ」は大切な人、ものなどを失うことによって生じる、その人なりの自然な反応、状態、プロセスのことです。どんな感情も反応もおかしなものではありません。怒りも、悲しみも、時に安堵さえも失ったときに感じるのは自然なものです。あなたの感じる「ままに」大切に感じてみることからはじめてみませんか。グリーフはそこから乗り越えるものとか立ち直るものではなく、抱きながら歩むものとして見られるとすこし楽になるかもしれません。
一般社団法人 リヴオンHPより)


起業のきっかけ

―――起業されて何年になられますか?

今年で創業15年になります。終活カフェである「ブルーオーシャンカフェ」は開店6年目です。

 

―――ブルーオーシャンという名前はどのような由来からでしょうか?

 社名である、ハウスボートクラブは起業時に購入した船の船体に書いてあった名前です。
サービス名である「ブルーオーシャン」は、海の青と、ブルーオーシャン戦略(新しい市場を生み出すことで、新領域に事業を展開していくというマーケティング用語)から由来しています。海洋散骨の認知度も高くはない状況でしたので、海に関わる事業であり、新たな領域への事業展開という意味を含めて命名いたしました。

ハウスボートクラブ号

休業中のブルーオーシャンカフェ

―――カフェを開くきっかけをお聞かせください

 散骨で携わった方々が気軽に立ち寄れる場所をつくりたいと思ったのがきっかけです。
学生時代カフェでバイトしていたこともあり、昔からの憧れもありました。終活カフェとしてさまざまなイベントも開催してきましたが、終活を「ブーム」から「文化」にしたいという想いがあります。
 オープン当時は怪しまれてましたね。変な宗教ではないかとか、契約書にサインされるのではないか?とか(笑)。5年経ちコミュニティサロンとして地域の方々にも少しづつ浸透してきたところで、コロナによって一変。現在カフェは休業しています。

 

―――どんなきっかけで起業されたのでしょうか? 

 今の会社を起業する直前は花関連の仕事をしていました。生花をインターネットで仕入れる会社です。もともとはIT業界におりまして、起業するのも今回で2回目です。一度目は、学生時代にIT関連の会社を仲間と立ち上げました。ちなみに今でもその会社はあるんですよ。
 ハウスボートクラブを起業するきっかけは母を亡くしたことです。闘病中の母は、「お墓に入りたくない、沖縄の海に散骨してほしい」という言葉を私に残していました。母の希望どおり沖縄の海へ散骨し、それから数年後、縁あって船を購入し起業することになります。

 人の死によって、人生や価値観がガラッと変わる方も多いと思いますが、私も母の死は大きな転機になりました。起業時に心に決めたことは「散骨」をライフワークにしようということです。様々なしがらみとの葛藤や、将来への不安、大切な人を失った喪失感など、悩みを抱える人々の手助けになるのなら、快く残りの人生を捧げよう。それが母の遺志を受け継ぐことになるのかもしれない。このことは今でも変わらず想い続けています。

 

グリーフケアの学び

―――グリーフケアを学ぶきっかけもお母様とのことでしょうか?

 そうですね、母のこともありますが、直接のきっかけとしては、散骨に立ち会った時の経験からです。
もう10年以上前のことになりますが、お母さまを亡くされた中学生のお子さんが、散骨する船の中で号泣する場面に接し、どうしていいかわからない、どう声をかけていいのかわからない。ただただ無力感だけが残り、グリーフケアを学びたいと思いました。

 

―――グリーフケアの学びはいかかでしょうか?

 グリーフケアを学ぶことは、自分に向き合うことでもあります。人のグリーフに接する前に自分のグリーフを認識することからはじまり、自分のグリーフに向き合うのは結構きつかったですね。グリーフケアを学びはじめて10年以上経ちますが、やればやるほどわからないですし、難しいですね。

 

何度でも大切な故人様の所へ会いに行くことができる、合同メモリアルクルーズもグリーフケアのひとつ

 

グリーフケアのひとつ 水溶性のメッセージカード「おくり鳩」

 

人を支えることは、己を知ること

―――最近新たな学びを重ねていらっしゃるとか?

 はい、社会福祉士の資格取得の勉強中です。
昨年4月に専門の学校へ入学し、来年2月の国家試験に向けて勉強中です。

 

――なぜ社会福祉士の資格取得を目指していらっしゃるのですか?

 散骨希望のご遺族とは、亡くなった後からのお付き合いがほとんどです。お骨になった方がどんな生活をされて、ご家族との関係はどうだったのか、どんな最期を迎えられたのか、わかりません。起業して15年目になりますが、やればやるほど、生前にご縁をつなぎたいという想いが強くなってきました。生前からお付き合いするによって、もっとよいお見送りができるのではないか?そんな想いから学びたいと思いました。

 カフェオープン時から介護従事者とも繋がってきたんですね。交流会なども開催してきました。ですが、その中で話している言葉がわからず主催者でありながらアウェイ感が強かったです。名刺に書かれている肩書の職種がわからない。話している専門用語、言葉がわからない。福祉について知りたい、学びたいという想いはずっとありました。福祉関係の資格もたくさんありますが、社会福祉士は大学卒業と専門の学校に行って必要単位と実習を受けることで受験資格が得られるということもあり、今回勉強しています。

コロナ前に開催されていた、医療、介護従事者の交流会

 

――社会福祉士の勉強はいかがですか?

 社会福祉士の勉強は幅広いです。自分では高齢者向けの福祉の勉強と思っていましたが、子ども、貧困、障がい者、更生など多岐にわたります。レポート課題もたくさんありますし、想像した以上に大変です(笑)ですが、本当にいい勉強になっています。基礎実習では地域包括支援センターで、展開実習では特別養護老人ホームへ実習に行かせていただき、本当に勉強になりました。
 
一緒に学ぶ仲間と出会えることも大きな宝です。定年退職後に学んでいる方、脱サラして学んでいる方や、いろんな職種や経験を重ねてきた方と繋がれるのは嬉しいですね。そこは学生時代の勉強とは違うと思いますし、良さでもあるなと思います。

 

――今までの経験や学びとつながることもありますか?

 そうですね。グリーフケアで学んできたことにも繋がるなと思います。
福祉の用語に、「自己覚知 じこかくち」という言葉があります。援助者である自分自身を知るということ。自分の価値観や考え方の傾向、自分は何者なのか客観視し、把握することが大切という意味です。
 
これは実習先でもよく言われました。さまざまな利用者さんと接する中で、自分とは違う価値観と出会うことも少なくありません。嫌悪感を抱く場合もある。ひとりひとりの成育歴が違うので当然ではありますが、自分の価値観で良い悪いの判断、好き嫌いの判断がぶれないためにも、自己覚知は必要であると。

 このことは、グリーフケアでも学ぶセルフケアでもありますよね。人を支えることは、己を知る。ことだなと改めて感じました相談を受け、適切なところに繋ぐのが社会福祉士の役目です。面接の方法や心理学の勉強もあり、対面でどのように接して、どう対処するか技術を必要とされます。グリーフケアに重なる部分もたくさんあるなと思いました。

世界の福祉の歴史もイギリスにて、キリスト教からはじまっています。
社会福祉士の学びはお坊さんにもオススメですよ。

 

 

新たな船出

――コロナ状況の今、環境、心境の変化などいかがでしょうか?

 大変革です。散骨の施行数も激減ですし、カフェは休業中でオンラインイベント開催へと切り替わりました。
ですが、社会福祉士の勉強もこのタイミングなのでできています。今まででしたら現場の仕事も忙しく各地へ出張に出ていましたので、じっくり勉強する時間も取れませんでした。コロナが落ち着いたら、どんな社会になっているのかわからないですが、原点回帰とアップデートを繰り返すのかなと思います。

 

――これからについてお聞かせください

 まだまだ水面下で動いている状態ですが、来年に向けて少し可能性のある動きを予定しています。コロナによって一変し、また新たな船出です。行く先には、霧はかかっているかもしれませんし、嵐や大きな波がくるかもしれません。ですが、少しずつでも前に進んでゆきたいなと思っています。

 

――ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

 村田さんとリアルにお会いしたのは初対面の一度だけ。それ以降はオンラインのみやりとりですが、毎月のようにじっくりとお話しながらご縁が深まっています。起業時のお話など今回初めて伺う内容でまたさらに距離が近づいたように感じます。

 ご縁が深まるきっかけの【ブルーオーシャン法話カフェ】次回は10月24日(日)です。
生と死とグリーフについて、法話と対話のオンラインイベント。今回は、インタビューの中にもありました、セルフケアについて。インタビュー内でも、「人を支えることは、己を知ること」というキーワードが出てきましたが、後回しになりがちなセルフケアについて、一緒に考えてみませんか?ご参加お待ちしております。

*インタビュー・文 松村妙仁
*2021年9月20日 オンラインにてインタビュー

インタビュー記事 PDF版のダウンロードはこちらから


【ブルーオーシャン法話カフェ】2nd Season お坊さんと語ろう!生と死と喪失について Vol.4

■日時:2021年10月24日(日)20:00~21:30
■開催方法:Zoomミーティングによるオンライン開催
■参加費:1,000円
■詳細・お申込はこちらから


村田ますみさん プロフィール

株式会社ハウスボートクラブ 代表取締役社長CEO
一般社団法人日本海洋散骨協会 初代理事長

1973年東京生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業。
IT業界等を経て、2007年株式会社ハウスボートクラブを設立。海洋散骨等のメモリアル事業を展開。2015年国内初の終活コミュニティカフェ「ブルーオーシャンカフェ」をオープン。
一般社団法人グリーフサポート研究所認定 グリーフサポート・バディ、フューネラルセレブラント。
上智大学グリーフケア研究所 グリーフケア人材養成講座に4年在籍。

著書
「お墓に入りたくない!散骨という選択」(朝日新聞出版)
「海へ還る~海洋散骨の手引き」(啓文社書房)

 

◆株式会社ハウスボートクラブ ホームページ
http://hbclub.co.jp/company

◆ブルーオーシャンセレモニー ホームページ
https://blueoceanceremony.jp/

◆ブルーオーシャンカフェ ホームページ
https://blueoceancafe.tokyo/