ごえんびと 第6回

ごえんびと

第6回
のうのば
森のようちえん こめらっこ
土屋 美香 さん

土屋 美香さん

 

連載コーナー「ごえんびと」
壽徳寺にご縁のあるひと(ごえんびと)にインタビューし、想いを伺いながらご縁を深めます。


第六回目は「のうのば」と「森のようちえん こめらっこ」の土屋美香さんです。
のうのばさんとは、2019年に壽徳寺にて「五感で感じる精進料理」を開催して以来のご縁です。

この会では、のうのばさんが育てた会津伝統野菜「小菊かぼちゃ」を使わせていただきました。また土屋さんは「森のようちえん」を運営されています。
農業と森のようちえん。どちらも人と自然の密接につながっている活動です。アクティブに活動される土屋さんの源も伺いながらのインタビュー。
どうぞご覧ください。


会津伝統野菜を育てるということ

―――「のうのば」さんについてお伺います
いつから始められたのでしょうか?

 「のうのば」という屋号で、会津伝統野菜を育てはじめて七年くらいになります。
伝統野菜を育てるきっかけは、『東北食べる通信』という雑誌をとっていたことで、会津伝統野菜を守ってくださっている会津若松の長谷川純一さんや喜多方の清水薬草店さんとつながったことです。そこから、小菊かぼちゃ、余蒔きゅうりの種をわけていただき、育てています。
 猪苗代は若松より標高高い分、収穫時期もずらせるので、向こうで足りないとかあった時には届けていたり、今でもつながっています。町内で育てているのはうちだけですかね。
ちなみに、この屋号は、農業の場という意味で「のうのば」と付けました。ひとと自然を繋ぐ場として響きがいいなと思って付けた屋号です。

精進料理の会

のうのばさんの小菊かぼちゃ

―――伝統野菜を育てる上で大変なことはありますか?

 苗をおこしている時から、他の野菜との成長スピードが全然違います。出だしが順調な時もあれば、ゆっくりの時もあります。収穫量が少ないというのはありますね。
 固定種、在来種と言われるものですが、撒いて毎年採っていることでその土地に合ったものが残ってくるようになってきます。この土地にあったものを種取りし七年くらい続けてきて、だんだん土地に馴染んで強くなっていますし、毎年育ってくれています。

―――無農薬、無化学肥料で栽培されているのですよね?

 はい。農業も自然の一部をお借りしてやっているから、なるべくその土地に負担をかけずやりたいという想いは常にありました。それに、安心して子どもに食べさせられるもの、と考えたら、できるだけ薬とか余計なものはあげたくないなと思うようになり、無農薬、無化学肥料にたどり着いたんです。
 いろんな育て方、やり方がありますが、これからもここで繋げてゆくために、地域の循環の中で生きていけるやり方を選んでいきたいなと思います。

――お寺からの依頼はどう思われましたか? 

 なんで私達のこと知ってるの?と思いましたし、見つけていただいてありがたいなと思いました。
精進料理の会の時に小菊かぼちゃを使っていただいたことをきっかに、森のようちえんのフィールドとして、境内で焚火や焼き芋、裏山へ遊びに行かせていただいてありがたいです。

 

―――猪苗代に移住されて何年になられますか?

 嫁に来て八年ですね。東京で開催されているアースデイという地球環境を考えるイベントで知り合ったのがきっかけで結婚し猪苗代に嫁ぎました。
 私は東京生まれで、大学院卒業後、児童館や学童施設で勤務し、その後青年海外協力隊としてバングラデシュへ二年赴任。その後アースデイの仕事をしていた時に出会って結婚し、猪苗代へ来ました。

 

―――田舎のカルチャーショックとかはありませんでしたか?

 福島には、喜多方や鶴ヶ城しか来たことなかったのですが、そんなに抵抗なく生活しています。バングラデシュを経験してますから、大抵のことは大丈夫です笑。
 東京から嫁に来ただけで地域のみなさんがよろこんでくださって、ありがたかったですね。みんな優しく見守ってくれる地域ですので、ありがたくやりたいようにやらせていただいています。

 

 

森のようちえんについて

―――森のようちえんについてお伺います。いつからスタートされたのですか?

 子どもが産まれてからです。
二歳ごろ、畑仕事している脇で遊んでいるのを見て、「こんな環境で育てたいな」という気持ちが湧いてきました。綺麗な室内の幼稚園で過ごすのもいいけど、人間も自然の一部だから、土とか野菜とか水とか、その中で育つのは自然だなと。
 じゃあ、この辺にそういう場所がないからやるか!と思った時に、同じ気持ちのお母さんたちが何人かいて、はじめました。園舎とか整えてからというのもありますが、整えている間に子ども大きくなってしまうので、とりえず三年前にはじめてしまいました。
 この園舎は祖父の持ち家ですが、今は使われなくなったので、みんなで畳替えや床張り直したり、修繕してスタートしました。

園舎周辺の風景

園舎の入口

―――通われている方はどのくらいいらっしゃるのですか?

 登録としては五十組くらいいらっしゃいます。ほかにインスタグラムなどをみて初めて参加される方も多いです。投稿を見て、その時に来たい方が参加しているかんじです。
 コロナ前は若松、郡山、喜多方など町外が多かったですが、コロナ後は町内の方も増えました。猪苗代町内も自然は多いですが、私有地だったり、自由に遊べるところが限らてしまうんです。
 ここでは、田んぼの用水路や湖水に行ったり、外でのびのびと、こじんまりとやってますので、みんな久々にマスク取って遊んでますね。

 

――コロナで園を開くことは大変な面もありますか?

 緊急事態宣言中は、閉めていました。ですが子どもたちには今しかない、「また来年やればいいや」で済まないこともあると思い、開けようと決めました。こんな状況でもできることがあるんだなという気づきも多かったです。
 大人よりも子どもの一年は変化が大きいです。その大事な一年を、充実して過ごしてもらえたなと思っています。

 

――園ではどんな雰囲気でしょうか?

 分断がない、なんでもありの場、分断の逆を行く場でありたいと思っています。それぞれの考えを認め合える場にしたいと思っています。
 今日も、何気ない雰囲気の中でお母さん同士が授乳の悩みなどをお話されていていました。かしこまった講座ではなく、リラックスした中でお互いの相談やお話ができる場となっているのがいいなと思います。
 お互いの子どもと一緒に遊んだり、お母さん自身もこの場を楽しんでいるのが嬉しいです。この場の雰囲気、なかなかひと言で説明できないんですよね(笑)

 

自分が楽しむということ

――コロナでご自身の変化はありましたか?

 コロナ以前は、いつも去年どおりの繰り返しだったなと思います。コロナになって、今までの人生を立ち返ることが多いですね。おもしろいと思うとつっぱしる方ですが、一度立ち止まれということなんだなと感じています。
 一年以上東京に行かない毎日。普通なら堪えられないはずなのに、ちゃんと足元を見られるようになっています。足元をちゃんと見ると、いい素材がたくさんあるなということを実感しています。

 

―――いつもパワフルに活動されているイメージがあります。原動力はどこから湧いてくるのでしょうか?

 私自身が楽しいことですね。誰かの為にやってあげてると思うと、自分が願っている反応がないと期待はずれと思ってしまう。けれど、自分自身が楽しくて、楽しむことがスタートであれば、それを広げていけますよね。そんな感じがします。
 東京にいたらこんなことはやってないですね。なにもないからこそ、無いなら自分でつくればいいじゃん!という気持ちでやっていることは多いなと思います。今の活動も海外協力隊のようなかんじですかね(笑)

 

―――今後考えている事お聞かせください

 森のようちえんをNPO法人化して、事業として回してゆきたいと思っています。お母さん達の仕事を生む。仕組みを考えていきたいです。どんな形であれ長く続けてゆくのが目標です。
 こんなことを思ったのも、つい最近です。森のようちえんが四年目に入った頃。このままでもいいけど、仕事をつくりたいなという想いが出てきました。
 田舎にもいろんな働き方があってもいいなと思ってます。親が自分たちで仕事作って楽しそうにやってるというのを、こども達が見て、ワクワクしてもらえるかなと。そんな想いから法人化しようかと思い始めました。

 都会に住んでいた時は、モノとお金のつながりが強かったように感じます。田舎は人と人とのつながりが大きい。困った時には助けてくれる誰かがいてくれる。気を遣うこともありますが、お互いさまの精神で他人でも助けてくれる人がいる事はありがたいですね。
 これからもこの環境で、私ができることを楽しみながら続けていきたいなと思っています。

 

――ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

 

 時間をかけてゆっくり育てる会津伝統野菜のお話や、森のようちえんでのお母さんとお子さんの自主的な時間を大切にされているお話はとても印象的でした。短期的な結果を求めがちな今の世の中ですが、それぞれの時間軸の中で、自然の流れに沿って時を重ねることの大切さを改めて考える時間となりました。
 これからも、森のようちえんのフィールドのひとつとして境内を活用いただいたり、のうのばさんの野菜での精進料理の会をまた開催できればと思っております。

 

*インタビュー・文 松村妙仁
*2021年7月14日 森のようちえん園舎にてインタビュー

インタビュー記事 PDF版のダウンロードはこちらから


【森のようちえん とは】

自然体験活動を基軸にした子育て・保育、乳児・幼少期教育の総称。
森に限らず、海や川や野山、里山、畑、都市公園など、広義にとらえた自然体験をするフィールドを指す。対象は、幼稚園だけでなく、保育園、託児所、学童保育、自主保育、自然学校、育児サークル、子育てサロン・ひろば等が含まれ、そこに通う0歳から概ね7歳ぐらいまでの乳児・幼少期の子ども達を対象とした自然体験活動を指す
*森のようちえん全国ネットワーク連盟HPより


土屋 美香さん プロフィール

東京都出身
大学・大学院で社会福祉を学び、児童館や学童保育所勤務を経て青年海外協力隊としてバングラデシュの村の小学校で2年間活動。帰国後、地球の環境について考える日本最大級のイベント「アースデイ東京」事務局に携わったことをきっかけに猪苗代町へ移住。身体にやさしいバングラデシュのカレーを広めるべく「curry&spice cholun(チョルン)」としても活動。

◆森のようちえん こめらっこ ホームページ
https://komerakko.webnode.jp/

◆のうのば facebookページ
https://www.facebook.com/nounoba/