「民報サロン」2022年4月21日掲載

ハートウェアの糸紡ぎ

 会津木綿が好きな私は、略式のお袈裟に仕立てたり、お寺のオリジナル御守りとして奉製したり、日常に取り入れています。お袈裟をつけていると、いい色だね、どこで作ったの?私も作りたい。という声をいただきますし、御守りも大好評です。お気に入りを身に着けながら、会津の良さを知っていただく機会として、楽しみながら続けています。

 この会津木綿、織る工程に特徴があるんですよね。タテ糸に小麦でん紛の液をつけ、固く糊付けしてから、ヨコ糸を織り込んでいきます。糊付けしたことによって生まれる細かい節が、タテ糸とヨコ糸の間に空気の層をつくり、吸水性や保温性に優れた会津木綿になるそうです。また織り機に何百本の糸を通すのは人の手によるもの。年代物の織り機の調子を見守り手入れしながら、職人さんの熟練した技と想いによって仕上がってゆきます。

会津木綿の御守り袋

 この工程を知り、先日福祉関連の講座で聞いたお話を思い出しました。
「世にある様々な活動を支える為には、三つのシステムが必要です。ハードウェア〔道具や設備〕とソフトウェア〔道具や設備を動かす仕組み〕そしてハートウェア〔Heart=心や気持ち、活動に関わる姿勢や想い〕の三つです。その中でも一番外せないのはハートウェアです」

 織り機はハードウェア、技はソフトウェア、そして職人さんの想いのハートウェア、この三つが揃っているからこそ会津木綿ができあがります。それぞれ欠かせませんが、その中でも職人さん達のハートウェアが軸となり、受け継がれ、今こうして会津木綿を手にすることができているのだと思います。そしてこのハートウェアは、私達の日常のどんな場面においても大切であり、原動力になっているのではないでしょうか。

 私自身、故郷に戻っても何もわからないところからスタートでした。糸に例えるならば細くすぐ切れてしまうようなものです。その一本の糸が、経験や学ぶことで知識や方法という糊付けがされ、丈夫な糸になってゆく。その糸に、様々なご縁や周りの方の想いが織り込まれることで、多彩で温かみのある織物へとなっていきます。ハードウェアもソフトウェアも整っていない中、無我夢中でハートウェア(想い)だけで走ってきました。こうして走ることができたのも、その想いを受け止め、支えてくださる周りの方々のおかげです。みんなのハートウェアが紡ぎ合うことで歩むことができました。もちろん、ハートウェアだけでは物事は進みません。ですが揺るぎないハートウェアがあればこそ、ハードもソフトも整ってくると思っています。

 みなさんの人生という織物には、どんな経験や想いとご縁が織り込まれていますか?決して同じものはないオンリーワンの織物ですよね。これから私も様々な経験やご縁、想いというハートウェアの糸を紡ぎ、色鮮やかな織物を織り続けてゆきます。福島、会津、猪苗代、そしてお寺や仏教の豊かさを私なりに発信し続け、繊維の一本、糸の一本でも必要としている方に届けられればと思っています。

福島民報「民報サロン」2022年4月21日寄稿

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