「民報サロン」2022年3月31日掲載

頼りにされる幸せ

 「おてらおやつクラブ」という活動を聞いたことありますか?お寺のお供えものを仏さまからのおさがりとして、経済的困難を抱えたご家庭へおすそわけをする活動です。2013年に奈良県のお寺から始まり、今では全国約1800ヶ寺が賛同し、拙寺を含め福島県内のお寺も登録しています。お寺の「ある」と社会の「ない」をつなげたこの仕組みは高く評価され、2018年のグッドデザイン大賞を受賞。現在は奈良県からの認可を受けた認定NPO法人として活動の輪を広げています。

 飽食の時代と言われる現在ですが、日本では7人に1人の子ども達が貧困の状態にあると言われます。おてらおやつクラブは、おすそわけの発送や啓発活動、居場所づくりを通し、子どもの貧困問題解決に寄与することが目的です。困った時に気兼ねなく助けての声が上げられ、「たよってうれしい、たよられてうれしい。」と思える社会の実現を目指しています。

 誰かに助けてほしい状況の時、みなさんは気兼ねなく「助けて」が言えますか。言える誰かがいますか。お願いしたら迷惑がかかる、周りに迷惑かけるわけにはいかない。そんな思いが先立ってしまうのではないでしょうか。
 ですが、思い切ってお願いしてみると快く引き受けくださり、逆に感謝され、自分の予想とは違う反応が返ってくることもあります。自分では相手の迷惑になると思っていることも、相手にとっては頼ってくれることが嬉しい、有難いと思うこともあるでしょう。人に頼られるというのは嬉しいことですよね。誰かの役に立てることは自分の存在を認めてもらったようで、幸せな時間でもあると思います。
 そんな時間を、おてらおやつクラブの活動を通して私も実感しています。「たよってうれしい、たよられてうれしい。」という言葉の通り、周りの方に頼ること、頼りにされることで生まれる嬉しさです。遠方からわざわざお供えをご持参くださる方、子ども達に人気のキャラクターのお菓子を選んでお供えくださる方、おすそわけを受け取ったご家庭の声。この活動をしているから巡り合えたご縁です。みなさんのお気持ちに触れ、私自身が多くの方に支えられ、今まで見えていなかったつながりを実感する、有難い時間です。

「幸せかどうかは自分が決める」
「迷惑かどうかは相手が決める」
 そう思っています。幸せの尺度も、迷惑かどうかの尺度も人それぞれ。迷惑をかけなくない、という気持ちも尊いです。ですが、遠慮しすぎず時には甘えてみることも大事なのではないでしょうか。どんな状況でも安心して誰かに頼り、頼られる、お互いさまの社会にしたいものです。
 お寺の「ある」は、お供えものだけではありません。長い歴史の中で培われてきた人や地域とのつながり、ご縁、安心の場や存在でもあります。今後も継続して、社会の「ない」におすそわけしてゆきます。
 今年8月には、おてらおやつクラブの活動と子どもの貧困問題を知っていただく機会として、全国巡回展を寿徳寺で開催予定です。頼りたい、頼られたい、どちらのお気持ちも大切に、必要としている方に届けられればと思います。ぜひ皆様お越しください。

福島民報「民報サロン」2022年3月31日寄稿

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