ごえんびと 第12回

ごえんびと

第12
mucaca – 漢方養生薬膳メゾット -主宰
重川 真佐美さん

重川 真佐美さん

2019年 壽徳寺での講座の様子

連載コーナー「ごえんびと」
壽徳寺にご縁のあるひと(ごえんびと)にインタビューし、想いを伺いながらご縁を深めます。

第12回は、mucaca 主宰 重川真佐美さんです。重川さんは、漢方の理論を基に、季節や体質にあわせた養生生活のアドバイスする活動をされています。 2018年と2019年には壽徳寺にお招きし、薬膳の講座を開きました。本尊薬師如来と薬膳という“薬つながり”がきっかけです。外部講師をお招きして開く講座は、この薬膳講座が初めてだったこともあり住職としても思い入れがある講座です。
オンラインですが、久々にお話し、今だからこそ漢方薬膳の大切さを実感する時間となりました。
どうぞご覧ください。


コロナ状況下において

―――こうしてお話するのもお久しぶりですね。お変わりなかったですか?

 ご無沙汰しております。変わったところもあり、変わらないところもあり、現在はゆったりとしたペースで活動しております。

 

―――状況が変わったということで言うと、コロナの影響も大きいでしょうか?

 そうですね。コロナが流行り始めた3月、東京でのイベントに参加したのですが、その直後に緊急事態宣言が出て、これ以降講座はずっとストップしてましたね。仙台のスクールで講師も担当していますが、それも中止でしたし、予定していたお料理教室も、なにもかもできない状態でした。
 2021年はペットの薬膳講座は少し開催できたかな、というかんじです。ペットマッサージの講座も開いていたり、2年前よりは少しずつ活動できたかなと思います。2021年はあっという間に過ぎた印象がありますね。季節感も感じずに、このコロナの話題で過ぎ去っていくような、追われていくような感覚があります。

―――コロナによって状況が変わり、身心の変化もありましたか?

 漢方薬膳の講座やイベントが急に全部ストップした状態でしたので、人との交流が途絶えてしまうことの恐ろしさ、人と関わっていない不安感、自分の中で感情が崩れてゆくことと向き合い、考える2年間だったなと思います。
 人と話さない時間が増えるにつれて、自分が自分でなくなってしまうような、自分が保てなくなってしまうくらいの恐怖を感じていましたね。ちょうど私自身の体調の不調も重なり、精神的なバランスも崩していたのだと思います。

―――その恐怖からどのように持ち直したのでしょうか?

 意識の切り替えですかね。何もできないということよりも、現実を見て、この中で何ができるかという意識への切り替えですかね。

 漢方や薬膳の考え方の基本である陰陽論*でいえば、陰である悪いこともあって、陽である良いこともあるということです。コロナをきっかけに、いろんな変化があったと思うのですが、今までにない考えが生まれたというのも事実ですよね。なので、新しい考え方に切り替え、前向きに考えられるようになると私自身も変化していったように思います。心閉ざされたというより、現実を受け止めて、それに対応していくことが大切であることに気持ちが切り替えられるようになりましたかね。

*陰陽論・・・漢方の基本的考え方。自然界の全てのものを「陰」と「陽」の相反する二つの要素で捉える考え方。相互に対立、依存しながら絶えず変化している関係のこと。

(薬日本堂株式会社 運営サイト「漢方ライフ」ホームページより抜粋)

―――考えの切り替えができたということも、これまで学んできたことが活かされていますか?

 そうですね。私自身の身体と気持ちのバランスが崩れたということで、これまで学んだことを元に、自分の身体の状態を見直しました。コロナ前までは家族やお客様など相手を軸においてきたのですが、いざこのような状況になると、自分をみようと思いました。その時間ができたことで、これからのためにどんな養生をしなければならないのか見つめ直すことができました。
 体の不調の対処法も今まで学んできた中に教えがあります。昔から伝わってきた漢方医学というのは生活に密接している、この生活に根づいていることを実感しましたね。自分がしっかり養生できていることが基本であり、それを元にみなさんにお伝えしなければならないということを痛感した期間でした。

 

―――漢方薬膳を学んでいて良かったなと?

 本当にそうですね。免疫力免疫力って言われるけど、目には見えないし、どうすればいいのか不安ですよね。予測できないウイルスに誰もが怯えていたと思うのですが、これまで学んできた薬膳や養生をやれば怖いことはないぞと思えるようになりました。学んできた養生を続けてゆくことが、このコロナに勝つ。そこは揺るがず、お客様に伝えてゆく。
 特別変わったことをするのではなく、規則正しい生活、睡眠と食事。手洗いうがいにマスク。言われていることをしっかり守ってやっていれば、そんなに極端におびえることはない、ということを私自身も実感しましたし、お客様にもお伝えしてきました。

 そして精神面も大事なんですよね。病は気からというように、精神から崩れていく。私自身、お客様と会えない、授業ができないという精神面から崩れていったので、気の持ちようは大事です。私は負けないぞ、という気をもつこと、邪気を入れないぞとバリアを張ることは大事ですよね。

 

漢方薬膳との出会い

―――漢方薬膳を学ぶきっかけはご家族が病気になられてからですよね?

 息子の大病がきっかけです。治す薬がないと言われたことから始まっています。この現代に不治の病というのがあるのか、手立てがないということにまずショックを受けました。なにで治すのか?とお医者さんに聞いても答えがない、入院しても食事を出すくらいしかできない、と言われました。それでは、この子を治すには家族である私達しかいないんだなと思いました。
 もともとアトピーとか身体も弱かったので食べ物には気をつけていたのですが、これ以上になにに気をつけるのかと思い、いろいろ検索して漢方薬膳に行きついたんです。そういえば、中国2000年の歴史、3000年の歴史って言われるし、それが今まで続いているということは、効果があるからだと思って学びはじめました。これを学べば息子は助かるかなと。

 息子も熱が39度越えが2ヶ月も続くような状態もありました。その中でも少しでも食事はとってくれていたんですね。学んだことを調理して食べて、ちょっとずつ良くなってくる。という状態を目にすることによって、食事ってやはり大事だなと実感しました。生きていくということは、食べていくことなので、その内容が変われば自然と変わってゆくことなんですよね。息子を救ってくれたということで、長年伝え継がれてきたこと、漢方薬膳は大事であるということを身をもって経験しました。

 

――そこから学びを深め、伝える側としてスタートされたんですね?

 漢方を学んでから私自身も花粉症が治ったり、風邪も10年くらいひいてないですね。以前は毎年お正月になると風邪をひいて寝込む。連休の度に体調崩していたのが今は全くないということは、私にとっては考えられないことです。生活や食べ物が変わることで、こんなに人の身体って変わるんだということが自分の身体を通して実感しました。そして伝えたいなと思い「mucaca漢方薬膳メソッド」としてスタートしました。今年で9年目です。漢方を学びはじめて10年ですね。

 

これからについて

――これから考えていらっしゃることお聞かせください

 状況が許せばお料理教室が再開できればと思っています。あとはペットの薬膳やマッサージ、お茶の販売を広めてゆきたいですね。オンラインでも講座ができればと思ってます。人とのコミュニケーションが途切れているので、そういった場ができたらいいなと思ってます。

 ペットの薬膳やマッサージも結構人気なので、いろんな方に体感していただきたいですね。ペットのマッサージが受けられて、薬膳の話が聞けるとか。人もペットも両方に役に立つ体験などができるといいなと考えてます。

 コロナによって自分達の身体に意識が向けられるようになって、そのことをもっと大事にしてもらいたいなと思っています。今までも健康ブームはありましたが、テレビで言ったことに沿って、これを飲めばいいとか、あれを食べればいいとか、なんとなくその波に乗って、どこか他人事になっていたように思います。自分の健康について真剣に向き合っていなかったと思うんですよね。それが今の環境の中で、その健康をどうやったら手に入れられるのか、必死に考えていると思うんです。
 漢方や薬膳とかハイテクではないですが、知識を根本として、食べること大事だよねとか、しっかり身体の基礎をつくるものを摂るということも、そこに目が向いている今だからこそ、大事にしてほしいなと思いますね。人のからだはみんな違います。同じことをやっても反応が違います。人それぞれ、その人にあったやり方、薬膳があるんです。生きてゆく楽しみのひとつとして取り入れてもらえたら嬉しいですね。

 コロナは陰ですが、これがいつか陽となっていくように、その中で漢方薬膳を取り入れてよりよい生活になるように、私自身も力を入れてお伝えしてゆきたいと思っています。このピンチをチャンスに変えて、今の時間も大切にいろいろ考える時間として過ごしてゆきたいですね。

 

――ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします

 

漢方、薬膳と聞くと敷居が高そう、面倒くさそう、高級そうなどちょっと敬遠しがちなイメージがるかもしれません。
ですが、いつもの食材でちょっとした工夫で取り入れることができるのですよ。季節や体質、体の状態に合わせて、組み合わせること自体が薬膳であり、より健やかに生活することにつながります。からだとこころの健康にご利益のある、薬師如来が御本尊であるお寺で、薬膳の講座を行うことで、健やかな生活のきっかけになってくだされば、と思い講座を開きました。
今回改めて重川さんとお話をしながら、このコロナ状況下だからこそ、漢方や薬膳の考え方を学ぶことは大事だなと感じました。集まることがまだ難しい状況ですが、また壽徳寺にて漢方や薬膳講座を開きたいなと思うインタビューでした。

 

*インタビュー・文 松村妙仁
*2022年2月2日 オンラインにてインタビュー

インタビュー記事 PDF版のダウンロードはこちらから


「mucaca」とは・・・
日本語に直すと「無花果」(いちじく)です。
無花果の中に沢山詰まった花のように、漢方にも沢山の生薬や食薬があります。また無花果の葉は5枚ですが、漢方も自然界すべてのものが5つの要素から成り立っていると考える中国医学の自然理論のひとつ「五行説」があります。
そんな漢方自然哲学を無花果に思いを重ね、健康な生活を過ごせるお手伝いを、主婦目線で簡単にわかりやすく届けたいとの願いを込めて・・・
(mucaca 〜漢方養生薬膳メソッド ホームページより)


重川 真佐美 (おもかわ まさみ)さん プロフィール

福島県郡山市在住

息子の大病をきっかけに漢方・薬膳を学ぶ。
主婦目線から家庭の食卓を担う方々にお伝えしたく「mucaca〜漢方養生薬膳メソッド」を主宰。
薬膳料理教室、漢方講座、オリジナル漢方茶の販売やワークショップ、カフェなどの薬膳アドバイザー、コラム、ラジオ出演など。学舎でもある薬日本堂漢方スクール認定講師として仙台にて活動。
ペットも長寿の時代!健康で楽しく家族と暮らせるようペットの漢方・薬膳料理教室やハーブボールや刮痧マッサージなども行う。

 

mucaca – 漢方養生薬膳メゾット – ホームページ
http://mucaca.jp/